採用がうまい会社がやっていること/やっていないこと
From 山極毅 丸の内のオフィスより
今日は、以前対談形式で収録した、企業の採用活動に関する記事です。
COVID19の感染も終息の気配を見せてきました。
また、新政権は10兆円の規模の経済対策を実行するとも表明しています。
民間のシンクタンクは、まもなく人材争奪戦が始まるだろうと言っています。
そんなとき、企業の人事部は何をすべきなのか?
今日は、「採用がうまい会社がやっていること/やっていないこと」という対談の内容を、
メルマガ形式でお届けします。
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ナビゲーター
採用がうまい会社とうまくいっていない会社とは、どういうところが違うのでしょうか。
山極
いきなり核心をついた質問ですね!
仮に新卒の学生の話をします。
今いろいろと問題になっていますけれども、ナビサイトを通じて学生にアプローチをして
会社説明会などをやり、面接に来てもらい、そこから選考が始まります。
インターンをやるなどしますけれども、これは、実は採用以外のあるプロセスと
非常によく似ているのですが、それは何だと思いますか。
ナビゲーター
この流れは何に似ているか・・・。なんですか?
山極
これは、集客という言葉がよくありますけれども、お客さんを集めるための作業なのです。
ナビゲーター
まずたくさんの人に知ってもらって、集めて、そこから商品のPRなどをしてということですね。
山極
そうです。
それと同じことをやってくれるのが、就活のナビサイトなのです。
ナビゲーター
代わりに集客してくれるということですね。
山極
集客してくれるので便利なのです。
ナビゲーター
お客さんを集めてくれるのですからそうですよね。
山極
便利なので皆が使いたがります。
ということは、あの中で何が起きているかというと、競争相手だらけになっているわけです。
ナビゲーター
確かに、競合する会社さんでも使っているからですね。
山極
そうです。
例えばあなたがレストランを経営しているとします。
新たに店をオープンしたら、お客さんに来てほしいです。
そこで、集客をしてくれる集客専門会社がいて、
そこにあなたが広告を掲載するためにお金を払います。
お金を払うとそこが広告を出してくれるのですが、実はこの会社は、
横にある会社のレストラン、あなたのライバルのレストランB、C、D、Eも皆、
ここに広告を出してくれと来ているわけです。
この瞬間に、あなたのレストランはもうその中の1個になってしまうわけです。
ナビゲーター
横並びになってしまいますね。
山極
お客さん側から見ると、そのサイトに行くといろいろなレストランの情報があるから、
皆が一気に集まってきます。
けれども、勘違いしてはいけないのは、人が集まったからといって、
別にあなたの会社に興味があって集まっているわけではないのです。
ナビゲーター
確かに、そもそもきっとその集まったお客さんも、
そこに行けばいろいろな情報が得られるということで来るのですよね。
特定の企業を見たくて来ているわけではなくて、
まず第一歩として使っているという感じですよね。
山極
採用がうまくいっている会社がやっていること、正しく言うと
やっていないことなのですけれども、そういうナビサイトを使わないということなのです。
ナビゲーター
採用がうまくいっている所は、あのナビサイトを使っていないのですね。
山極
使っていないです。
使っていないということは、特に彼らも宣伝しないので、
普通の人から見ると何をやっているか分からないのです。
ナビゲーター
けれども、ナビサイトを使っていなくても採用がうまくいっているということは、
つまり、うまく訴求できているということですよね。
山極
そうです、うまく訴求できている会社があるのです。
いろいろ調べていたら、どうも共通点があることが分かりました。
先ほどの集客の話に例えるといいのですけれども、ものすごくうまくやっている会社は、
いわゆるB to Cといわれている自分の会社が個人のお客さま、消費者にサービスを提供したり、
売ったりしている会社であって、かつマーケティングとか営業系の会社です。
ナビゲーター
もともと見せ方がうまいということや、プレゼンテーション力があるなどですか。
山極
そうです。
マーケティング力がある会社です。
つまり、ここで何が起きているかというと、自分の商品を売っているのと同じことを、
商品の代わりに自分の会社、あるいは自分の職場を売っているという
プロセスを取っている会社です。
ナビゲーター
そうなってくると、プレゼンテーション力がものをいいますね。
見せ方ですね。
山極
プレゼンテーション力もそうなのですが、もう少し深く突っ込んでいくと、
ただその業種なら全員成功しているかというとそうでもないのです。
B to Cの営業系の会社は採用が得意です。
対極にあるのが、逆に一番難しいというか、採用力も相対的に定価している業界は、
B to Bの製造業なのです。
B to Bの製造業は、なぜかというと、彼らのビジネスはもう取引先が決まっていて、
個人のお客さんではなくて、長い付き合いがある、あるいは製品の仕様が決まっています。
すると、安く、軽く、早く、高品質に作るのが彼らのビジネスの成功なのです。
これと同じことを採用でやってしまうのです。
うちの会社はこのような会社です。
何十年前に設立して伝統があります。
取引先はこうです。
これを聞かされて、学生に魅力的かというと、ノーですよね。
ナビゲーター
確かにノーです。
そういうナビ系のサイトさんなどだと、
セミナーなどもこの合同説明会の中でやっていたりするのです。
そのときに、いろいろな会社の人事の代表の方や、それこそ広報担当など、
多くの部署の方が登壇されて、会社の魅力について語るなどという場面もあるのですが、
まず会社の魅力を語っている人と、そもそも会社の生い立ちやバックボーンを
語っている人に分かれてきます。
そういうときは、かなり学生さんの表情も違うこともあるのです。
実際に入社してから、自分がどのようにステップアップしていくかという
ビジョンを語ってくれる採用担当のときだと、学生さんたちもメモを一生懸命取ったり、
前のめりだったりなども多いのですが、どうしても会社の歴史などにいくと、
どうしても少し眠そうになってしまうことも多いです。
山極
そこへいってしまうと、どうしてもそうです。
ナビゲーター
学生さんが興味を持っているものは何なのかということです。
山極
学生が一番興味を持っているものとは何だと思いますか。
ナビゲーター
やはり、働く環境など、入社してからどうなるかではないかと思います。
山極
環境はありますね。
ナビゲーター
例えばもっと自分がどんどんステップアップ、スキルアップできるような環境なのか
どうなのかということです。
山極
まさにそのとおりです。
先ほどのB to Cの営業系、マーケティング系の会社でうまくやっている所が
共通して書いていることは、『あなたが成長できる環境がここにあります』
というキーワードです。
うちの会社は何者です、などということは一切説明していないです。
なぜ君はここで働かなければいけないのか、働いた結果何が君に残るのか、
どういうスキルが身に付くのかということを懇々と伝えているのです。
ナビゲーター
特に今は就職したら一生安定なわけでもないので、皆、恐らくその会社に入って
どのようなものが身に付くかということや、スキルや人脈もそうですけれども、
得られるものがないと、なかなかそこに就職するというジャッジにいかないのではないか
と思います。
山極
そうですね。
そこは今、ものすごい勢いで変わってきていますが、
これに気が付いていない会社はどんどん採用力が落ちているのです。
もう間もなくこれは死語になると思うのですが、
どういう言葉がもう使われなくなるかという話です。
それは、企業研究という言葉です。
企業研究とは、昔、学生が多くいて、会社の数が少なくて、
人気のある企業の業界研究をしましょうと、学生側が研究をしていました。
今は完全に、企業は選ばれる側になっているわけです。
選ばれる側になっているのに、ナビサイトで集めて選別してやるというようなことは、
完全に時代を取り違えています。
ナビゲーター
むしろ企業は選んでもらうという立場ですね。
山極
やらなければいけないのは、学生が企業研究をすることではなくて、
企業が学生の研究をしなければいけないということです。
ナビゲーター
学生が何を求めているかを研究したほうがいいのですね。
山極
そうです。
B to Cの会社はもともとここがものすごく得意なわけです。
どのようなお客さんがいて、そのお客さんにどのような利点があって、
マーケティング用語で言うとベネフィット、それでどのようなオファーを出す、
どのようなスキルが身に付きますなどということを、もともと彼らはやっているのです。
ナビゲーター
どう訴求したらうまく響くかというノウハウを持っていますね。
山極
そうです。
そのような活動を、職場を対象にやっているということが、今、起きています。
これにまず一番、気付いていません。
ナビゲーター
まず気付いていないのですか。
山極
そうです。
気付いたとしても、やり方が分からないのです。
ナビゲーター
そうだと思います。
特にB to Bの会社さんなどだと、自分たちが普段やっていることの中にまずないことなので、
どうしたらというところだと思うのです。
山極
プロセスがないのです。
やり方が分からないので外に頼もうと思いますが、
そういうことをやっている人がいないとなります。
しかしいるのです。
成功している会社はやっているのですけれども、彼らはその方法を一切公開しません。
なぜなら、公開しても自分の一文の得にもならないからです。
今、成功している会社は存在しています。
存在しているけれども、その方法が一切、知られていません。
そのため、きょう言ったのですが、ポイントは、求職者のほうを企業が研究する時代に
今もう変わってきていますということです。
それから、学生に対して、自分の会社や職場で彼らにとっていいことは何か
というメッセージを書いた会社は、全部、成功しています。
ナビゲーター
やはり学生さんたちがまず会社を選ぶにあたって重要視していることを、
しっかりと伝えられた会社はうまくいっているということですね。
山極
これに気が付いて、次にアクション、何を起こすかということが大事になってくるわけです。
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https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/12673.pdf
こちらの日本総研のレポートでも、対面型サービスの人員回復のためには、
いったん他業種に転職した人員の呼び戻しが必要であると述べられています。
ところが、コロナで打撃をうけた対面型サービス業は、賃金アップの余力がなくなっており、
結果的に人員の確保が難しい。
結果的に業績の低迷につながる、と予測されています。
これからの採用活動は、どのように求職者をあつめるか、
そしてどのように候補者を見極めるか、この2つがますます大事になってきそうですね。
山極毅
P.S.
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