人事の断捨離
From山極毅 丸の内のオフィスより
改めて見てみると、断捨離というコトバにはかなり激しいものを感じます。
なぜかといえば、
断つ
捨てる
離れる
いわゆるコーチングの世界では、使ってはいかないNGワードに認定される、
ネガティブワードばかりです。
しかし断捨離の効果は絶大です。
悪癖を断つ、しがらみを捨てる、古いものから離れて新しいものに進む。
何かをリセットして前進する時には、良い行動なのかも知れません。
今日は、戦略人事で必要な「断捨離」のお話しです。
―――――――
ナレーター
今回のテーマは、『多くの会社が陥りがちな人事の落とし穴』についてです。
山極さん、現在の人事はどのような状況ですか。
山極
最近のニュースの記事でよく出るのが人手不足です。
人手不足で倒産するところまでいくと赤信号ですが、実際はその前に始まっています。
多くの会社が、必要な仕事のための必要な人が採用できなかったり、辞めてしまったり、
定年退職してベテランがどんどん抜けていったりしている状況です。
そのため人事部は現在、採用が大変です。
また、働き方改革で残業を抑えなければならなかったり、ダイバーシティ、
多様性活用のために女性の管理職を増やさなければならなかったり、
いろいろなことが仕事として挙がってきているので大変です。
ナレーター
山極さんがおっしゃったことは、全て人事の方がしていることです。
山極
50人くらいの小さい会社だと人事部が独立しておらず、
人事部と総務部と広報が一緒になっているケースがあります。
100人を超えてくると、人事部が独立して機能し始めます。
私が以前調べたところ、社員100人に対して人事部員は1人から2人です。
なので、100人の会社で人事部1人だと、かなり大変です。
2人くらいは欲しいですが、人事部長とスタッフ1人の場合や、
人事課長と1人の場合なども結構大変です。
ナレーター
社員の人数に対して、人事の方の人数は結構、無理させてしまっているように感じます。
少ないですね。
山極
いろいろな会社のデータがありますが、最もスリムにしようとすると、
100人で1人から2人です。
私が今まで調べた中で最も多い会社がGoogleです。
Googleは採用に力を入れています。
製造業ではないので、付加価値を生むためにはとにかく優秀な人を
どんどん採用しなければならないということで、全員で採用という感じだったのですが、
計算すると採用担当者は、社員100人当たり13人くらいいます。
ナレーター
採用担当の数が、結構多く感じます。
山極
Googleの人の増え方のグラフを描くと分かりますが、社員数が急激に増えているので、
そのくらいでちょうどよいのだと思います。
ナレーター
まず人材を採用する所にそれくらい人を割ければ、良い人材を採用することができますね。
山極
人事の最終的な目的は給料を払うことでもなく、採用だけでもなく、
経営をきちんとサポートできるかどうかです。
しかし管理系の部門なので、売り上げに直接つながる何かをすることが
どうしてもイメージしにくいのです。
ナレーター
確かに、人材を管理するというイメージで、それがイコール利益になるという
イメージはなかなかありません。
山極
日本の企業は、高度成長期からバブルが崩壊して現在まで来ましたが、
管理系だと思われている部署はコストセンター部署といいます。
費用が発生する部署です。
もう一つ、営業やマーケティング部門のような部署はプロフィットセンターといい、
利益を生む部署です。
人事はコストセンター、営業はプロフィットセンターという構図になっていますが、
これからは、人事もプロフィットセンターになっていかなければなりません。
そうなるために、より経営と深く密接に連携をしなければなりませんが、
多くの会社でこの連携ができていません。
陥りがちな最大のわなです。
ナレーター
利益を生む側にはまだ完全にいけておらず、あくまで管理の部署という
扱いになってしまっているのですね。
従来の人事をもっと経営や利益につなげていくためには、
どのような改革をしていけばよいでしょうか。
山極
いろいろな方法がありますが、人事部の人数も限られています。
しかし、しなければならないことはたくさんあります。
そうすると、人事部員を採用しようという話になりますが、残念ながら、
世の中に人事部経験者はそれほどいません。
どこの会社も、人事部の人員が最も手薄になっている状態です。
そういう時に、人事部が最初にしなければならないことは何だと思いますか?
ナレーター
本当だったら、もし金銭的に余裕があるなら、
人事の専門家などに相談できればよいのではないでしょうか。
山極
その前に、一つしたいことがあります。
それは、捨てることです。
しないことを決めることです。
何でもありは、何もないということです。
ナレーター
二兎を追う者は一兎をも得ず、と同じですね。
山極
そうです。
しないことを決めていくことが必要です。
ナレーター
物事に優先順位をつけていくのですね。
山極
そうです。
これはもうしないと決定をすることです。
例えば先ほどの、プロフィットセンターの営業のような部署なら、
これを売るためにこちらの商品を下げようと考えたり、
1カ月だけ値段を下げることを考えたり、いろいろな捨てる意思決定をしています。
商品を捨てたり、定価の販売を捨てたりします。
そうすると、いずれどこかでうまく当たります。
しかし、コストセンターの部署は、そのように思い切ったことがなかなかしにくいです。
ナレーター
大きく改革することは難しいです。
どれも重要な仕事です。
山極
そう思っていますが、どれもが重要な仕事であるはずがありません。
人も時間も限られているので、全てできるわけがありません。
そのため、切ればよいのですが、切り方が分からないのです。
ナレーター
恐らく、優先順位がつけられないのでしょう。
山極
経験があれば切れます。
これを切るとどのような悪いことが起きるかが分かっていれば、切れます。
最大の問題は、仕事を切れないことです。
ナレーター
まず、選べないのだと思います。
山極
今までしていたことなので、続けなければならないのではないかと思う人が非常に多いです。
世の中が順調に子どもの数も増えていて、市場も右肩上がりで伸びていれば
それでもよいのですが、今はそのような時代ではないので、
どんどん切っていかなければなりません。
それが切れないことが問題です。
しないことを決めていくという作業が、いわゆる戦略立案です。
ナレーター
しなくてよいこと、自分の会社にとってどれをまず外していけばよいかの見極めを
する能力がある人は、少ないのではないのでしょうか。
山極
少ないです。
経験が必要ですし、ふん切りも必要なので、ここをどうするかです。
ナレーター
特に、今までずっと当たり前にしてきたことなので、
そこから取捨選択していくという発想が、もしかしたら、ないかもしれません。
山極
よく会社などで、新年度の4月か5月に、1年の計画として、今年したいことを書きます。
それを見ると、その会社や人事部がどのくらい戦略的かが、おおよそ分かります。
戦略的でない会社は、今年したいことが非常にたくさんあります。
あれもこれもそれもしたいと言っても、できるわけがありません。
ナレーター
人手に限りがありますものね。
山極
自由度が高いこと、何でもするということは、失敗へ直行しています。
ナレーター
満遍なくなくしようとすればするほど、何一つできないということですね。
山極
そうです。
全てできずに終わる例が結構多いので、とにかく絞っていくことです。
ナレーター
本当に必要なことからフォーカスを当てて、取り組んでいく必要があるのですね。
このようにすればもっと人事が利益を生む側になっていくという、
このからくりというか、流れを知っている方は、意外といないのではないでしょうか。
山極
あまりいませんし、いたとしても年長者、課長や部長などの古くから会社にいる人、
あるいはビジネスの経験が長い人の、経験の中で蓄積されてしまっています。
ですので、そのノウハウが会社にないとは言いません。
あるけれども使えない状態になっています。
ナレーター
経験としてあるだけで、それをアウトプットすることがないのですね。
山極
そうです。
応用できないのです。
応用できる形にするためには、例えばAという仕事があり、
Bさん、Cさん、Dさん、Eさんという候補者が4人いた場合、
誰をこの仕事に就けたらよいか、選ぶ方法があるかということです。
そういう方法を持っていない会社はおおいです。
個人別にレベルの差は恐らくあると思うので、最も良い人を選びたいです。
ナレーター
人事が戦略というのは、意外な表現だと思いました。
山極
戦略人事という言葉はかなり前からいわれてきていますが、
言葉が非常に概念的というか一般的過ぎて、中身の細かい議論になっていませんでした。
会社の商売の中身や、事業の成長のフェーズで全て違いますが、ポイントは捨てる技術です。
何をしないかを決めることです。
もう一つは、利益を生むために組織をつくっていかなければならないので、
きちんと適材適所に人を置いてあげることです。
ナレーター
人材の配置が大事になってくるのですね。
山極
誰が仕事をするかで、仕事の出来栄えは変わります。
ナレーター
適材適所という言葉が出ていたように、その人が生きてくるポジションに配置されていれば、
恐らく仕事は普段よりももっと効率良く進んでいきます。
山極
それを見つけていくことを人事部がしなければなりませんが、とにかく陥りやすい状態は、
『全部する』という状態です。
しかし、全部する暇はないので、何かに絞ります。
どれか一つに絞るとしたら、適材適所のためのツールを使ったり、理論を使ったり、
はたまたシステムを導入したり、いろいろ方法はあると思いますが、
それをしていけば徐々に売り上げも上がっていくし、適材適所で定着率が上がります。
要は、辞める人が少なくなるという効果が出てくると思います。
―――――――
心配なので必要なことを全部やる、という気持ちになるのは人の常です。
いつか必要になりそうだから、ひとまず取っておく。
この気持ちと、イケてない人事戦略の共通点は、
捨てられないというメンタリティなのですね。
さぁ~、私も書類整理します。
山極毅
P.P.S.
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