会社が儲かっても給料が上がらない本当の理由<3>
<前回のおさらい>
☑ ここ10年は、昔に比べて給料があがりにくくなってきている。
☑ 原因は、付加価値向上代に対する、給料の向上額のトレンドが寝てきているため。
付加価値と給料の関係に、過去何が起きていたのか?
付加価値と給料の関係がどのように変化したのかを、過去のデータをみながら整理してみましょう。
まずは、1990年~1991年のバブル経済崩壊の時です。下の図2で黒丸で囲った所です。
点の動きは、右下から左上です。
これは、会社が生み出す付加価値は低下(左に移動)したが、給料は逆に上がった(上に移動)ことを示しています。
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次は図3、1997年~1999年の金融不安の時です。
右上から左下に点が大きく動いています。付加価値も下がり、給料も下がったことを意味しています。
バブル崩壊の時とは異なり、付加価値の低下が給料ダウンに直結してしまいました。
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2007年~2008年のリーマンショックの時も、右上から左下に点が大きく動いていますね。
この時の一年間での付加価値の低下代は、1960年以降で日本経済が経験した最大の下げ幅です。
それにもかかわらず、給料の減り方は金融不安の時ほどではありませんでした。
図4の赤い線をみると分かるように、最近10年のトレンド線は、高度経済成長期のトレンド(傾き)とは異なっています。
このトレンド線は、リーマンショック時の不景気時点で形成された、これまでにない新しい傾きなのです。
過去のデータを分析して初めてわかること
図4のトレンド線をよく見てみましょう。
2009年から徐々に回復基調となり、2011年の東日本大震災で多少減速しましたが、その後2013年まで順調に回復しています。
そして、その傾きはリーマンショック時に悪化した付加価値を取り戻すかのように、右上に動いています。
ここで事実を整理してみましょう。
●リーマンショックの時には、付加価値のダウンほど給料が下がらなかった(下げられなかった)
●その後の付加価値の向上によって、リーマンショック前の状態に少しずつ戻ってきた。
●下がる時に下がらなかった分、上がる時も上がりにくくなっている。
●従って、付加価値が上がっても給料は急に上がらない(上げられない)
という構図なのです。
リーマンショック後は、多くの企業が、支払い能力を超える給料を支払っていたことになります。
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官製春闘の成果は?
2013年の秋、首相官邸の主催によって、政府と経済界、労働界の合意形成を図るための政労使会議の第1回が開催されました。
つまり2014年の賃上げが、官製春闘の1回目の成果ということになります。
官製春闘によって、トレンド線に対して賃上げ額が大きくなったのかどうか、データを見てみましょう。
分かりやすいように2013年以降を拡大表示しています。
2013年から2014年の傾きは、赤い点線で示される過去10年の傾きよりも少し大きくなっています。
ところが、2014年から2015年の傾きは、前年のそれよりも寝てしまいました。
2013年~2015年の2年間でみると、トレンド線を若干上回る程度で推移していることが分かります。
つまり、「過去10年間のトレンドを若干上回る賃上げ成果があった」、というのがデータ分析結果からの官製春闘の評価になります。
ここで一つ疑問なのは、なぜ過去と同じような傾きで給料が増えないのか?という点です。
総理大臣が給料を上げてくれと要請して、企業も収益を上げている、なぜ過去のトレンドを少し上回る程度の昇給しかできないのでしょうか?
企業は給料を出し渋っているのでしょうか?それとも何か別の理由があるのでしょうか?
次回に続きます。
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