From:山極綾子
「すみません、この案件って、明確なゴールとかありますか？」
（お願い…案件自体を無くそうって言ってほしい…）
「そうだね！決めなくちゃ！じゃあ…」
（あれ！？むしろ忙しくなる方向に転んじゃった！？）
そういうつもりで言ったんじゃなかったんだけどなあ…。
そんな気持ちになることは、仕事でもプライベートでも日常茶飯事です。
察してほしいなあ、と思って発した言葉ならまだしも、
誤解の無いように伝えようと思っても上手く伝わらないと、ちょっぴり焦ることもあります。
例えば、後輩の研究を一緒に考えているとき。
考えていることを正確に伝えるのが難しく、
また、後輩が考えていることを正確に理解するのも根気のいる行動であり、
同じ方向を向くことは容易ではありません。
…その段階を飛ばしてしまったら、後で痛い目を見ることはわかるので、
もちろんきちんと意思疎通できるように頑張りますが。
先日、本を読んでいるとき、そんな勘違いが元で起きてしまった
悲しい出来事があったことを知りました。
その勘違いを起こしてしまった人の名前は、ローゼンブラットさん。
その悲しい出来事は、ニューラルネットワークが致命的な欠陥を持つ、
という誤った推測が起きたことでした。
ニューラルネットワークは、深層学習（ディープニューラルネットワーク）の
根幹を為す技術です。
深層学習が発展したことで、画像の解析や翻訳など、
いろいろなタスクが自動で行われるようになっています。
自動運転なども支える、最先端の技術です。
なんでも、「ニューラルネットワークは簡単な問題にしか適用できない」という
推測がされてしまい、研究予算が削減され、研究の停滞を招いてしまったというのです。
論理性の最高峰であると思われる学術分野ですら勘違いが起きるのだから、
私が上手く伝えられないことは当たり前なのだなあ、と少し勇気をもらった気がします。
山極綾子
P.S.
機械学習でいう「簡単な問題」にはいろいろなものが考えられますが
（おそらく、明確な定義などはないかと思います）、
例えば、2つの種類のデータをきれいに分けるルールを見つける問題を考えたとき、
その2つの種類のデータがきれいに、重なることなくすっぱり別れるのなら、
それは簡単な問題と言えます。
極端な例で言うと、固体のサイズから、その個体がゾウであるか、
アリであるかを分類する問題は「簡単な問題」と言えます。
ゾウに匹敵するサイズをしたアリは存在しませんし
（そんなものがいたら恐怖です）、その逆もです。
（こういった、きれいに分けることができるものを線形分離可能、と言ったりします。）
逆に、身長の情報をだけを使って男性と女性を100%の精度で分類することはできません。
話はそれましたが、現実世界の情報は単純ではないことを頭に刻んで、
しっかり伝えられるようにしていきたいなあ、と思わされました。
P.P.S.
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