交差点のプロに交じって・・・

From 山極 毅

どの交差点にも、「青信号への切り替わりを見極めるプロフェッショナル」みたいな人いませんか?

 

私の家の近くの交差点にも、そういう人がいます。

 

まだ赤なのに、堂々と横断を始める人たちです。

 

反対側の信号の右折信号が、何秒くらいで切り替わるを熟知してます。

 

彼らはためらいなく歩き始めます。その後、まもなくするとこちら側の信号が青になるという展開です。

 

プロの技はすごいなぁ、といつも感心してしまいます。

 

でも、このブログを読んでいる、よい子*1の皆さんは決してマネしないようにしましょう。

 

(*1 かつてのよい子も含みます)

 

子供の目線が親の行動を変える

 

いつも「プロ」が出没するその交差点での先日のできごと。

 

小さな男の子が、お父さんに手をひかれて信号が変わるのを待っていました。

 

いつものように彼らが渡り始めた時、小さな男の子も歩き出そうとしました。

 

もちろんお父さんは、「まだ赤だからもう少し待とうね」と優しく言いました。

 

私は、その時こう思いました。

 

「小さい子供が交差点で待っている時くらい、青になってから渡らんかい!」

 

赤信号で渡り始めた兄ちゃんは、スマホに夢中で子供の姿が目に入らなかったのかも知れませんけどね。

 

このお父さん、親になる前は交差点のプロだったかも知れません。根拠はありませんが、何となくそんな気がしたのです。

 

親は子供によって本当に親になる、という格言をその時思い出しました。

 

動物の子供たちは、なぜみんな可愛いのか?

 

私は、交差点に子供がいなければ、スタコラサッサと渡ってしまします。

 

でも、子供がいる時は渡りません。可愛い子供たちの「悪い見本」になりたくないからです。

 

オーストリアの動物学者、コンラート・ローレンツは、子供の「かわいさ」を研究した学者さんです。

 

彼は、我が子を可愛いと思う感情によって人類は生存競争を生き抜いてきている、ということを研究していたそうです。

 

我が子を「かわいい」と感じる親に育てられた子供が、より健やかに成長する。

 

その遺伝子が、後世に引き継がれていく、という循環が個体の生存のアドバンテージになるそうです。

 

子供の前では良い大人としてふるまうのも、人類のDNAに刻まれた種の維持に関わる本能なのかも知れません。

 

上司からは承認、部下からはフィードバック

 

実は、同じようなプロセスを、会社で経験したことがあります。

 

前職で私を成長させてくれた最高のフィードバック、それは上司からのものではなく、部下からのものでした。

 

あなたが部下の立場だとして、上司に改善要望を伝えることは大きなリスクを背負います。

 

実際に、上司に建設的なフィードバックしたにもかかわらず、その後ひどい扱いを受けたので、フィードバック自体を否定するようになってしまった人も知っています。

 

私の部下は、ひとことひとこと言葉を選びながらフィードバックし、行動改善の要望を出してくれました。

 

そのフィードバックは、当時の私の奮起の材料になりました。

 

その時の気持ちは、「これ以上、この部下にツライ思いをさせてはいけない。自分はもっとしっかりしなくてはいけない」、というものでした。

 

 

不思議なことに、上司からのフィードバックはあまり記憶に残っていません。上司からのコトバで覚えているのは、「おまえならできる!」という未来への期待です。

 

社員研修のプログラムで、上司になったらフィードバックのスキルを身に付けましょう、と教える会社があります。

 

そういう研修プログラムを提供している会社も多いです。

 

私は、そういうアプローチ以外にも、上司は部下を信頼し仕事を任せ結果の責任を取る、という上司の役目も教えるべきだと思うのです。

 

上司の立場になったら、部下が仕事をしやすい環境を作ることが大事です。

 

部下のサポートをするために彼らの声を聞くこと、つまりどういうサポートが欲しいのか?部下の意見を聞くことが必要だなと思っています。

 

部下はまだ経験が少ないからフィードバック能力は不十分だ、と考える人々も多いです。

 

しかし、その考えは部下の能力を信頼していないのと同じことではないでしょうか?

 

なぜ、そんなこと言いきれるのか?それにはエビデンス(証拠)があるからです。

 

私の会社が推奨している「マルチアングル・フィードバック」のコメント欄には、役割やポジションを超えて、いつも素晴らしいフィードバックが飛び交っているからです。

 

社員全員がお互いの成長に真剣に向き合う企業の業績は、コンサルしている私も学ぶべき点が多いです。

 

信頼しているよ!と口に出す管理職は沢山います。でも、行動に移せるのはほんの一握りです。

 

成功している企業とそうでない企業の差は、ほんとうに紙一重なんですよ。

 

 

p.s.

下に引用したフィードバックは、ある企業のスタッフが管理職に宛てた実例です。

 

「明らかに誰よりも働き成績につながるための方法をいくつも実践し課員を統率する姿には人として尊敬します。

 

細やかに課員の様子を把握しながら大きな声でみんなに声をかけてくれるので、支店の雰囲気も士気も格段に高まりました。

 

こちらからの依頼ももれなく対応してくださったり、提出書類に対しても管理が徹底しているのでとても助かります。

 

仕事が出来すぎてしまうので出来ない側の目線に立った指導ができるとよりよいと思います」

 

このコメントでは、ただ上司を称賛するだけでなく、きちんと改善要望を伝えていますね。

 

実際に、この企業は、たった一年半で営業利益を7倍にしました。

 

社員がお互いの成長にコミットする組織は、本当に力強いです。