ブログ

ブラッド・ピットに学ぶ採用論(SWP戦略で採用を考える Vol.1)

moneyball

さて、ついに採用について語るシリーズになりました。採用に関する議論は、人事業界の中で最も関心のあるトピックの一つではないでしょうか?私が人事に来て感じたのは、採用は人事の花形職務と認識されているということです。

世の中では、採用に関するセミナーや種々の採用テクノロジーがどんどん企画、提供されています。人事部の採用に対する関心の高さと、これらサービスの盛況さは企業の人材確保に関する関心の高さと言えます。

私も採用担当部長として、社内社外の方々とお話をさせていただく機会がたくさんありました。採用活動は企業の競争力の源泉を確保することであり、社内のどの層からも人事部の採用グループに関する期待値が大きいです。

採用しなければ人材を確保できないのですから、採用が重要であるという考えを否定はしません。しかし、私が不思議に思うのはアジェンダの多くが、採用の成功についてフォーカスされすぎていることです。

失敗の確率をゼロにはできない
keyboard

<採用の失敗が招くもの>
採用セミナーのほとんどが、”採用を成功させる”にはどうするか?にフォーカスします。そして、採用に関する新しいテクノロジーのほぼすべてが、”採用の成功”にフォーカスして企画、設計されています。

成功の確率を高める法則やテクノロジーがあれば、ぜひそれを聞きたいと思うのは人情です。しかし、人事部以外の複数の部署で管理職を任されていた経験からすると、採用の失敗だけは絶対に勘弁してくれというのが実感です。

その職務に求められる能力がない人間を採用してしまう、コミュニケーション能力に課題がある人間を採用してしまう、そもそも会社の文化にあっていない人間を採用してしまうと、彼/彼女を配属された上司とチームは、最悪とも言える状態に置かれます。

現場のマネージャーの立場から人事部にお願いしたいのは、『採用の成功』ではなく、『失敗しない採用』にフォーカスして欲しいということです。採用が失敗すると、その人材が配属されたチームの生産性は想像を絶する落ち込みをします。

その人ができない仕事をカバーし、その人のKY的言動に腹を立て、その人の礼儀に欠ける振る舞いを我慢しつつ、日々の業務を行うことになります。

この状態で生産性が上がる訳はありません。コーチングや指導をすれば良いではないか?という声が聞こえてきそうですが、会社はあいさつや気配りを教える場所ではないのです。

採用担当もこのあたりのことは十分承知しています。しかし、事例は多くないと思いますが採用の失敗は毎年繰り返されている可能性があります。

採用の失敗が繰り返される原因は色々考えられます。採用の成否をモニターする仕組みが存在していないのかも知れないし、失敗を認めること自体採用当の責任を認めることになるので表に出てこないのかも知れません。

採用の失敗は避けられないかのか?
moneyball6

<映画『マネーボール』にみる採用戦略>

 皆さんは、『マネーボール』という映画をご覧になりましたでしょうか?主演のブラッド・ピットは、大リーグのオークランド・アスレチックスのジェネラル・マネージャーとして実際にチームを率いた、ビリー・ビーンを演じていました。

ご存じない方のためにあらすじを紹介します。

元プロ野球選手で短気な性格のビリー・ビーン(ブラッド・ピット)は、アスレチックスのゼネラルマネージャーに就任する。チームはワールド・チャンピオンになるには程遠い状態で、優秀な選手は雇えない貧乏球団だった。

あるとき、ピーター・ブランドというデータ分析にたけた人物との出会いをきっかけに、「マネーボール理論」を作り上げるが、選手や監督からは反発を受けてしまう。

この危機をなんとか乗り越え、チームは徐々にまとまりを取戻した。そしてついに、当時の大リーグ記録である20連勝を達成しワールドシリーズにも出場した。

手腕を認められたビリー・ビーンには、ある有名球団からGMポストがオファーされ、破格の条件が提示されるのだが、、、

アスレチックスの人材KPIは何だったのか?
moneyball2

資金力がないアスレチックスでは、優秀な人材をお金でかき集めることはできませんでした。この制約の中で、勝つための理論を構築したのです。

大リーグのスカウト活動の失敗の定義は様々だと思いますが、経営的に一番ダメージが大きいのは大金を出してトレードで獲得したにも関わらず、大して活躍できない選手を雇ってしまうことです。

冒頭で私が申し上げた現象と同様これはチームの雰囲気を非常に悪くしますし、やる気を失う選手も出てくるでしょう。企業であれば、かなりの生産性悪化となることは必至です。

アスレチックスは、いわゆる『成功する採用』路線が取れなかったので、『失敗しない採用』を目指します。そして、当時だれも着目していなかったKPIを設定し、データを分析して必要な人材(選手)をトレードで揃えました。

失敗しないKPIは『出塁率』
moneyball3

<SWP戦略で採用を考えるとどうなるのか?>

SWP戦略の基礎は、人事のすべての活動を数値で記録し、経過を観察し、対策を決定し、実行に移す一連のプロセスです。病気になったり調子がわるくなれば、病院に行って血液検査するのと同じです。

ビリー・ビーンは、アスレチックスのチームビルディングにSWPコンセプトを適用したと言っても良いでしょう。彼らはどのようなデータを重視したのでしょうか?

重視したKPI

出塁率:アウトにならない確率。打率が低くても出塁率が高い選手を採用した

長打率:長打を打った数が多い打者ほど数字が大きくなる。これと出塁率を合算したOPS*をビーンはチーム編成で最重要視した。

(注:OPS*=On-base Plus Slugging ”出塁率と長打率の和”の意味)

選球眼:投手により多くの投球をさせる能力、四球を得る確率の向上に繋がるためである。

慎重性:ボール・ストライクに関わらず自分の苦手な球に手を出さないこと。選手の気質に依存する部分が大きく、コーチングにより改善できる部分はごくわずかである。

重要視されないKPI

バント・犠打:ワンアウトを自ら進呈する、得点確率を下げる行為と定義して完全否定

盗塁:アウトになるリスクを冒すより、塁上に留まって長打を待つ方が得点確率が高い。

打点・得点圏打率:打者がヒットを打った際の走者の有無は、その打者自身の能力が導いたのではなく、単なる偶然であるという考え。

失策、守備率:失策であるか否かは記録員が判断するため、主観的であるとした。

この明確な考え方と、データ分析を徹底的に行った結果、スレチックスは奇跡の20連勝とワールドシリーズへの進出を果たしました。以下のシーンは20連勝目をサヨナラホームランで決めたシーンです。(You Tubeにリンクしてますので携帯の方はご注意ください)

このホームランを打った打者は、以前の球団でキャッチャーでしたが肩の故障で将来を悲観していました。ビリー・ビーンが出塁率の高さに目をつけて、一塁手として再起させた選手です。

<御社の採用KPIはいかがですか?>
先ほどのアスレチックスのKPIを見ながら人事の採用基準のことを考えてみると、なかなか示唆に富んでいるように思います。

得点圏打率→打ったときにたまたま走者がいただけだから無視!
仕事の成果→本当に実力?それとも運?運も実力のうち?

バントの上手い選手→わざわざアウトを一つくれてやる必要なし!
調整業務が上手い人→ほんとにその調整業務必要なの?

守備率→足が速くて守備範囲が広い選手ほど悪くなりやすいので、守備の上手さと無関係。よって無視!
達成率→優秀な人ほど、難しい課題に挑戦させたいのでは?

特に守備率の話、ばってんが付くのが嫌なので、どんどんチャレンジしない風土になったりすると怖いですね

採用の評価基準は、その他の人事課題との連携を無視できないこと、KPIに何を選ぶかは採用担当だけがすれば良い仕事ではなく、人事戦略の全体を見渡すSWP戦略担当が中心となって考える仕事だと私は信じております。

 

コンサルタントに関するお問い合わせは、こちらからお願いいたします。人事戦略立案サポート、最適チーム編成のお手伝いをいたします。

野球→採用に置き換えてみると、、、
moneyball5

Copyright © 2016 Management HR Partners Co., Ltd. All Rights Reserved

経営人事パートナーズ:すべての企業、すべての人事部にSWP担当がいる社会を目指して

関連記事

  1. stress_1 メンタル離職の未然防止策(人と組…

    <前回のおさらい>・個々人の組織内での立ち位置や実力の発揮度合いは、チーム全体と個…

  2. einstein 組織と人事の相対性理論 (人と組…

    <前回のおさらい>・全ての人間は、ありのままの状態で貴重な存在である・チーム編…

  3. seminar <セミナー情報>18採用の準備は…

    ブログ読者の皆様へ今回はセミナーの告知です。弊社のビジネスパートナーである株式…

  4. puzzle-1152793_1280 戦略人事成功の秘訣(6)地道な地…

    前回、採用担当の業務範囲定義について触れました。採用以外の業務でも、例えば、教育、評価…

  5. 自由 あなたにとって『自由』とは何です…

    前回までのシリーズでは、人事戦略や経営的人事指標等の堅い話が多かったので、新シリーズで…

  6. DSC_0756 (002) ハードルが、かなり上がっていた件…

    From 山極 毅丸の内のオフィスより最近、『社内…

  7. 20160420_eyecatch 戦略人事成功の秘訣(1)SWPと…

    最近人事業界で、SWP(Strategic Workforce Planning)とい…

  8. engineering-1064005_1280 経営×人事の必須知識(労働装備率…

    前回、自社の生産性と他社の生産性を比較をする際、見落としてはいけない重要な点があると説…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

最近の記事

  1. st_2_thumbnail
  2. st_1_thumbnail
  3. st_1_thumbnail
  4. thumbnail
  5. st_2_thumbnail
PAGE TOP