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あなたにとって『自由』とは何ですか?(人と組織の生産性 Vol.1)

自由

前回までのシリーズでは、人事戦略や経営的人事指標等の堅い話が多かったので、新シリーズでは人間とその集合体である組織について書いてみたいと思います。このテーマで、個人と組織の生産性を上げるための現実的手段を考えていきます。

さて、今日は一つ考えて頂きたいことがあります。

それは、あなたにとっての『自由』とは何ですか?ということです。

この問いかけが、組織の生産性とどのように結びついているのか、検討していきたいと思います。

私は、いわゆるグローバル企業で長らく働いていました。アメリカ人、フランス人、ドイツ人、中国人、カナダ人、ロシア人、ポルトガル人、イギリス人、様々な国籍の方と仕事をしてきました。

共通言語はもちろん英語です。

彼らとコミュニケーションする際に大事なことは、その『単語』が示す意味を関係者できちんと確認することです。ひとつ例を挙げてみます。

ある時、2つの会社の開発部門の人数を比較してみようという話になりました。

私は、自分が所属していた会社の人員を調査し、私のカウンターパーソンは彼の会社の人数を調べました。

結果が出たので、テレビ会議で検討状況をお互いに報告しましたが、会議中にひとつ引っかかる単語が出て来ました。それは『Plant(工場)』とう単語でした。

私の会社では、開発部門は工場とは独立して運営されていたのですが、彼らの会社は工場の中のある部門も開発部門としてカウントしていたのです。

ですので、会話中に『Plant』という単語が出てきたのです。これが分かったので、お互いの開発部門にどのような機能部署があるのか、すべてリスト化して確認するという作業を追加しました。

これは、非常にめんどくさい作業であったことを今でも覚えています。

apple to orange

外資系企業では、 don’t compare apples to oranges (リンゴとオレンジを比較するな)、というフレーズを良く聞きます。

グローバル企業やアライアンスによる協業体制では、非常にローコンテクストな世界(暗黙の前提条件がほとんど通用しない世界)で仕事をすることになるので、様々な単語の意味をその都度確認することが必須の作業になるのです。

さて、最初の質問に戻ってあなたにとっての『自由』とは何ですか?です。

『自由』と言えばその概念は一つしかない、と皆さん考えてらっしゃると思います。

私は、時々大学で講義をする機会があるので、そこで学生さんたちにアンケートをとる言葉がいくつかあります。

その一つが今日の質問にある『自由』なのです。学生さんには以下のように問いかけます。

<質問>あなたにとって『自由』とは、どちらの感覚に近いですか?
①城壁の外に出てすべての制約条件から解き放たれて、自分の意思で自由に積極的に行動すること
②城壁に守られた内側にいて、環境の変化や外圧がない世界で自由に安全に暮らすこと

結果はいつも真っ二つです。

『自由』という極めてありふれた概念であるにも関わらず、聞いて最初に思い浮かべる光景は人によって大きく異なります。

上司、部下、同僚にこの質問を試してみると、恐らく半々くらいに分かれると思います。

実は、この認識の差をマネジメントしないまま放置すると、組織の生産性にマイナスの影響を与える可能性があるのです。

 

A and B

少し実例を考えてみましょう。上司Aさんが①のタイプ、部下Bさんが②のタイプだとします。

上司のAさんは、入社3年目の部下Bさんに、新しいプロジェクトの企画を自由に考えてもらいたいと思いました。そして、Bさんを呼んで以下のように言いました。

上司Aさん:『B君、こんどの新しいプロジェクトの企画を、新しい発想で自由に考えてもらえるかな?』

上司AさんはBさんの成長を促すため、制約のない条件で自由に能力を発揮して欲しいと思っています。

当然、Bさんからも『はい、ありがとうございます。喜んでやってみます!』というような答えが返ってくることを期待していました。ところが当のBさんの反応は、

部下Bさん:『はあ、分かりました。でも、自由って言われてもどこまでやればいいのか、良く分からないのですが。。。』

(上司Aさん心の声:『えっ、だから自由にやっていいよって、言ってるじゃん!』)

 

この現象は、上司と部下の世代間のギャップとみる人達もいますが、本質的には『自由』という言葉をどのように捉えるかの個性の差なのです。

Aさんにとっての『自由』と、Bさんにとっての『自由』は、必ずしも一致しません。

そして、人間は無意識に自分と似通った考えやリアクションを、相手に求めてしまいがちです。

日本人同士なので、当然同じことを考えているはずという前提で話をしてますが、そうではないケースは多いのです。

この2人の間に、この後何が起こったでしょう。

上司Aさんは、Bさんのことをもう少し積極性があって自主的に動ければ、新しい仕事もどんどん任せられるのに、、、』と思ったかも知れません。

逆に部下Bさんは、上司Aさんのことを『もう少し明確に指示を出して制約条件を細かく教えてくれれば、もっと早くAさんの期待に応えられるのに、、、』と思ったかも知れません。

お互いに、相手の反応に少なからずストレスを感じ、ちょっと苦手意識を持ったことでしょう。

チームとして目指している姿は同じなのに、少しすれ違ってしまっている悲しいケースです。

これが積み重なってくると、人間関係のストレスや、個々人のポテンシャルを十分に引き出せない(適材適所できていない)状態が継続し、生産性が徐々に低下していきます。

上の例のように第3者の視点で見ると理解できるのですが、類似の現象は日本中の組織で起きています。

前述のグローバル企業の例では、前提条件の確認のために非常に多くの時間を使います。

日本人からしたら、あり得ないくらいの時間を準備段階で使います。

ある意味非効率に思えるかも知れません。

しかし、一度相互理解が形成されたら、その後の工程で理解に齟齬が生じるケースはほとんどありません。

ところが、日本人だけで構成された組織では真逆になります。

後になって、『えっ、そんな風に考えてたのか!?』と驚くようなケースがないでしょうか?

このコミュニケーションロスの積み重ねが、チーム生産性の低下を招く要因の可能性となっているのです。

最近の複数の日本企業が直面している法令遵守精神の組織的問題や、技術的理由によるプロジェクトの失敗や日程延期(宇宙開発、航空機)等の課題を見てみると、技術的な問題だけでなく根底には通常のコミュニケーション問題があるように思います。

『相手は分かっていると思っていた』、『適切に処理されていると思っていた』、『期待には応えなければいけないものだと感じていた』等々。

言うべきことを適切なタイミングで発言できなかったことが、今多くのお客様、株主、関係者、取引先、従業員そして経営者を苦しめています。

今回から始まるブログ第3シーズンは、この問題ついて深堀をします。そして、ダイバーシティを推進する真の狙いも、併せて考えていきたいと思います。

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山極

あなたの『自由』は、城壁の中?それとも外?
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コメント

    • 西谷
    • 2017年 2月 02日

    自由,自主性によるモチベーション維持と結果が期待値に届かないので過剰干渉とのトレードオフに日々直面しているので、私には、興味深いテーマです。

      • yamagiwa
      • 2017年 2月 04日

      コメントありがとうございます。
      どこまで面倒を見るか(見てもらうか)、どこまで放任するか(放任してもらうか)、その境目の見極め(部下の希望)はいつも難しいですね。
      また、期待値のレベルもさることながら、アウトプットを出すプロセスも人によって異なります。
      その差は、実は個性の差から来ています。
      個性の差が理解できると、相手の行動パターン、反応パターンを理解できます。
      そうすると、会社内の組織での生活がグッと楽になります(ストレスが減ります)
      多様性をマネジメントすることは、方法論無しではかなり難しいですね。

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